大学院の研究とても楽しいんだけど、お金やその後の就職も不安だし、D進すべきかどうか、ホントに悩む…
院の研究、毎日ワクワクして充実してD進もアリなんだけど、この気持ちだけで博士課程やっていけるか不安なんです…
今回は、こんな方たちに向けた記事です
私は大学院時代、博士課程に進むか、修士卒で就職するかで悩みぬいた結果
『今、ワクワク感を実感している研究を続けたい!』
という理由で博士進学(D進)を決断しました。
博士になったら給与は保証されないし、就職窓口が減るだろうリスクに不安を感じつつも、それでもワクワク感を優先したのです。
実際、私は学振(DC1)が不採用だったので、D1の時は奨学金とRA等のバイト代で生活していました。
D2で学振が採用された以降も、月20万円と、決して高いものではなかったです。
それこそ就職した同世代に比べればかなり収入は低かったと思います。
ですが、博士課程時代は自分がこれまで生きてきた人生の中でも、トップクラスに充実していました。
博士を卒業して企業研究職として働き始めた今振り返って、より一層強く感じます。
今回の記事では、自分の大学院時代を振り返りながら
研究で感じていたワクワク感の理由
ワクワク感に従ってD進して感じたメリット
についてお話したいと思います。
この記事を読むことで、ワクワク感だけでD進を決断することへのためらいがすこし軽くなり、進路選択のヒントを得られると思います。
悩める読者さんの背中を少しでも押せたら幸いです。
では行きましょう!
大学院での研究にワクワクしていた理由
そもそも私自身、大学院の研究でなぜワクワク感を感じていたのか。
詳しい話は【平凡な学生が博士進学するほどに研究が楽しくなった7つの理由】の記事で書いていますが、とくに強い理由を整理すると下記の3つになります。
- 日々の小さな成功体験
- スキル面での成長実感
- 知的好奇心を満たせる
1.日々の小さな成功体験
日々の研究で実感する小さな成功体験が、ワクワク感を感じる理由の1つでした。
研究ではおおくの実験検証を繰り返しますが、毎回うまくいくわけではありません。
そもそも実験方法から新たに創り上げていくこともあり、失敗続きになることも珍しくありません。
そのなかで、「こうやったらうまくいくのではないか」と自分なりのアイディアを考え、検証することを日々繰り返すのです。
はじめは10やったら10失敗だったのが、次第に自分のアイディアがハマって成功することが増えていきます。
その時に感じる「やった、うまくいった!」という小さな成功体験。
狙った通りに実験できるようになると「あれを試したい、これも試してみたい」と、どんどん試したいアイディアが浮かんできます。
経験や知識とともに小さな成功確率も高まり、時に大発見につながるホームラン級の成功体験を実感することもあり、この感覚が病みつきになるのです。
2.スキル面での成長実感
自身の成長実感を感じる場面が沢山あるのも、ワクワク感を感じていた理由の1つです。
スキルといってもたくさんありますが、たとえば実験装置の取り扱いスキルです。
先週は全くチンプンカンプンだったのが、粘り強く毎日装置でガチャガチャしているうちに
「今週はちょっとできるようになったぞ」という、小さな成長実感を感じるのです。
実験に限らず、知識面でもそうです。
論文を初めて読んだとき、専門用語ばかりでよんでも意味不明でした。
しかし、そこから先輩の卒論・修論や、専門書などもよんで知識が少しずつ積みあがり、次第に論文を理解できるようになってくるのです。
「うわぁ、読めるようになってるよ…」と自身の成長に感動すら覚えます。
そのほか、研究報告書などの文書作成や、プレゼン、スライド作成、論文執筆スキルなど…
研究では自身の成長を実感する場面が多くあり、ワクワク感の源になっていました。
3.知的好奇心を満たせる
研究では自分のきのゆくままに知的好奇心を満たすことができるため、毎日ワクワクします。
実験結果を見て「なんで?どうしてこんな結果になった?」と専門書や論文を読んで、新しい理論モデルを学び、データと照らし合わせたり
検証のために別原理で評価する方法がないかリサーチして、見つけた手法で実際に実験して確かめたり
論文をうまく書けない時に、本をよんで執筆ノウハウを学び、即アウトプットしたり…
「疑問を解決したい!」
「新しいこと試したい!」
「もっと上達したい!」
このような知的好奇心や成長欲を存分に活かせるのがまさに研究だったのです。
『興味×強み』がハマっていたから夢中になっていた
上で見た3つのワクワクの理由には、実は共通することがあります。
それは、研究を通じて「興味を持てる分野で自分の強み・特性を発揮できていた」ということです。
急な話ですが、皆さんは『ikigai(生きがい)ベン図』というモノをご存じでしょうか?
人生を幸せだと感じられる『生きがい』を4つの要素に分解したモデルです。
生きがいベン図は下のようにあらわされます。
「好きなこと」「得意なこと」「お金を得られること」「社会が求めること」の4つが重なる部分が「生きがい」だ、というものです。
これは直観的にわかりやすいと思います。私も初めてこの図に出会ったとき、とても納得しました。
私の大学院時代の研究は、「好きなこと」と「得意なこと」が重なった、「情熱」領域にいたため、夢中になっていたのだと腑に落ちました。
(当初はお金はもらえてませんでしたし、社会に求められている感覚は持ていなかったので「生きがい」とまではいきませんでしたが…)
具体的に言うと、自分の研究テーマですが、初めはチンプンカンプンでした。
ですが知見の深まりとともにその物理の奥深さに魅了され、M1になる頃には分野自体に結構な興味を持てて、好きになっていました。
また、後になって自己分析をした際に、私には以下の様な強みや特性があることが分かりました。
- 計画を熟考するよりすぐに行動に移したい
- 自分の手足を動かして、技術的な上達を感じることがうれしい
- 改善点を見つけて物事を現状より良い状態にしたい
- なぜ?どうして?を納得いくまでとことん調べたい
小難しい装置を使いこなせるようになったり、実験で失敗しても改善点を見つけてアイディアをすぐ試して検証したり、なぜ実験結果がデータのようになったのか論文を調べて考察したり、などなど…
研究の仕事内容が、これらが自分の強みや特性、まさに「得意なこと」をドンピシャで発揮できる仕事だったのです。
このように「興味(好きなこと)」×「強み(得意なこと)」の両方がうまくハマっていた状態だったため、大学院時代の研究はワクワク感で夢中になっていたのでした。
ワクワク感に従って進路を決めて感じた4つのメリット
私は給与やその後の安定が保証されない不安を感じながらも、「ワクワク感」を大切にしようと決めてD進を決意しました。
>>【D進か就職か】泣くほど悩んだ末に凡人が博士課程に進学した3つの理由
冒頭で述べた通り、わたしの博士課程の日々は人生の中でも最高に充実していました。
当時の心境や日々の過ごし方を振り返りながら、ワクワク感にしたがって進路を決めたことによって感じたメリットを紹介します。
1.毎朝「今日はあれをしよう!」と胸が躍る
自分の好きなことを仕事にすると、毎朝「よし、今日はあの実験を試してみよう」とワクワクしながら職場(ラボ)に向かうことができます。
自分の好きなことをやっているので、何か実験で躓いても、苦痛よりも「なんでだ?」という好奇心が先にきます。
何か糸口がみつかれば、すぐにでも試したくなるのです。
また、「得意」を活かせているので、知らず知らずのうちに生産性も高くなります。
なので日々成長を感じるし、成果も出やすくなり、研究がより一層楽しくなるというまさに正の循環を感じていました。
2.ずっと夢中で研究してられる
自分の好きなことで得意なことなので、やっていてイヤになることがほとんどありません。
好奇心がモチベーションになっているので、むしろずっとやっていたい!という境地になります。
なので当の本人が全く無理していなくても、周りからは「よくそんな長いこと実験できますね」といわれることもよくありました。
3.思考が前向きになる
ワクワクできることを仕事にしていると思考もポジティブになります。
多少苦手なことやストレスのかかることを振られても自分のスキルアップになると思えるので、「よし、取り組んでみよう」と前向きになれるのです。
英語が苦手な私の場合、国際学会発表はストレスの高いことでしたが、「しゃあない、いっちょやりますか」と前向きに取り組めていました
逆に、興味を持てずワクワクしない仕事をしている場合、成長欲もわかないので、負荷の高い業務を振られてもただただ面倒くさいと思うだけになってしまいます。
4.世間と比較することが少なくなる
毎日楽しいことをやっていると、世間と自分の境遇をあれこれ比較することがとても少なくなります。
なぜなら、毎日ワクワクで夢中になれていると、幸福感が自分の中で自己完結するからです。
どういうことか。
例えば、モヤモヤしながら仕事をして充実感が少ない時、自分の中から湧き出る幸福感がないのでどうしても
「あの人よりも給与が多いから。自分はまだましだ」
「あの会社は残業が10時間、でも自分は60時間…あぁ。お先真っ暗だ」
こんな感じで、収入や労働環境といった自分の外側にある世間的な指標をつかって他人と比べることで、自身の幸せを測ろうとしてしまうのです。
他人との優劣からでしか幸福感を得られない人は、人生をツライと感じることが増えてしまうでしょう。
なぜなら、だれかに勝利して一時の幸福感を得ても、上には上がいるため、またすぐに劣等感を感じるからです。
これは、働き始めてから少々不満が募っている私自身が強く実感しております…
でも自分が夢中になれることで日々を送れている場合、行為そのものから幸せを感じられるため、外側に幸せを求める必要がなくなります。
もちろん周りと比べることがゼロになるわけではありません。
ですが不満を抱えた状態で生きている時よりは、自分の中で完結する幸せが増えます。
常に移ろう外側の状況に自分の幸福感が左右されることが少なくなるので、ずーっと高い満足感を維持できるのです。
それでも不安はつきもの|就活は並行してやっておく
「でもやっぱりD進が不安なことに変わりはない…気が変わってもいいように就活はしておきたい…」
という人は、就活も並行して進めましょう。
ただ、学振を申請する人も多いと思うので、いかに効率的に就活するかがカギとなります。
就活を効率よく進めるコツは、使える就活サイトを使い倒すことです。
特に下の3つは、研究職を目指す理系院生はぜひとも使うことをおススメします。
- スカウト型就活サイト
- 企業口コミサイト
- 就職エージェント
理系院生におススメのサイトを知りたい方は以下の記事を参考ください。
修士と博士時代の両方で研究職の内定をいただいた私もお世話になった、理系院生におススメのサイトをまとめています。
>>【博士学生必見!】修士・博士におススメする就活サイト8選
まとめ|夢中になれることがあるって、すごい幸せ。
私自身、大学院時代を振り返って強く思うこと、それは
『夢中になれることに出会えていることは、実はとても幸せなこと』
ということです。
なぜなら、そのワクワクの理由を掘り下げて、自分がワクワクできる”ツボ”として整理・把握しておけば
これからの人生で迷っても、そのツボを押せる道を選ぶことで高い確率でワクワクを再現していくことができるからです。
世の中には、自分のやりたいことや楽しめることが見つからず日々モヤモヤしながら働いている人が多くいます。
「ホントはお金よりも夢中になれる人生のほうが幸せなんだろうなぁ」
自分ではなんとなく気づいているのに、夢中になれることがわからないために目先のお金や忙しさを優先し、ストレスを抱えながらも働くことを優先してしまう人がとても多くいるのです。
これはD進か修士卒の就職かを選択する時も同じです。
「今の研究を続けたい」と思いながらもお金や漠然とした将来の不安から就職を選んだ結果、
「会社の仕事が全然楽しくない」とD進しなかったことを後悔する人がまさにそれです。
今、夢中になれることが見つかっているのならばワクワク感をもう少し大切にしてみてはいかがでしょうか。
「なんで自分はこんなにも楽しく感じているのだろうか」
と、自分の好奇心、ワクワク感の源泉にフォーカスしてみてください。
そこにはきっとこれからの人生をワクワクで満たしてくれる”自分なりのツボ”が隠れているはずです。
どうか、目先のノイズに惑わされて、その貴重なワクワクの芽を摘み取らないであげてください。
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