理系の大学院生は、修士課程に進学すると研究が軌道に乗りはじめ、どんどん楽しくなってくる人もいるでしょう。
「博士進学もアリかも」なんて思い始める人も多いかと思います。
しかし、修士1年は就活をする時期でもあり、「博士進学か就活か」を決断しなければなりません。
中には、
- 「進学に興味わいてきたけど博士は色々とつらいって聞くし、就職のほうがいいのかなぁ」
- 「修士卒でも企業で研究できるのに、わざわざ博士号を取得するメリットってあるのかな」
- 「進学か就職か、博士課程に進んだ人ってどうやって決断したんだろう」
という方も多いのではないでしょうか?
何を隠そう私自身も、進学か就職か、ほんとうに悩みました。
色んな情報や意見におどらされながらも考え抜き、最後は自分の手で博士進学を選びました。
そして無事に博士号を取得し、今では民間企業で研究をしています。
今回は、そんな私が
- 博士号を持つことのメリット
- 博士進学のメリット・デメリット
- 最終決断を下すまでの具体的な手順
を解説していきます!
人生の大きな分岐点にたたされて不安になる気持ち、本当によくわかります。
今回の記事が少しでもみなさまの不安解消につながればうれしいです。
では、いきましょう!
博士号をもつことのメリット3選
そもそも博士号を持っているのと、どんないいことがあるのかについてです。私は、
- 世界の研究者と対等に戦える
- 研究職キャリアの選択肢がひろがる
- 給与や満足度の高い仕事に就ける可能性が高い
の3つが主要なメリットと考えます。一つずつ説明しますね。
世界の研究者と対等に戦える
これは、多くの先輩研究者から聞きました。
修士卒で企業入社後、社会人ドクターとして大学に戻った方の多くは「海外企業との商談や共同研究で博士号をもってない自分は相手にされなかった」と言います。
今や国内企業に勤めても海外の企業と共同研究する例は珍しくありません。
海外の研究者は博士号がスタンダードです。
国内企業の研究職として働きたいと考えている方でも博士号は大きな強みになるのです。
ちなみに、下の記事では、博士卒後に大手メーカーに入社して1年目を終えた私が、研究職として働く中で肌で感じた「企業における博士号の強み」についてまとめていますので気になる方は是非ご覧くださいね。
研究職キャリアの選択肢がひろがる
まず注意ですが、職種関係なく新卒全体の就職窓口で見ると、学士や修士に比べ、博士卒の窓口は少ないです。
しかし、研究開発職においては、博士号持ちの人の選択肢は拡がります。
というのも、世の中には博士号持ちしか就けない仕事があるからです。
教授や准教授といった大学でのポストや理化学研究所のような国立の研究開発センターの研究職には博士号が求められます。
新卒でも中途採用でも、民間企業の中にも博士号を優先して採用する企業はあります。
それらの企業は博士が持つ高い専門性やスキルを買っているのです。
新卒時に博士号を持っていると、専門性を活かせる仕事に就ける可能性は高まります。
また、転職においても博士号取得者は民間企業だけでなく大学のようなアカデミック業界にキャリアチェンジすることも可能になります。
修士号しか持たない人がアカデミック業界のポストにつくことはほとんどできません。
終身雇用制度が崩壊しつつある今の時代、長期的にキャリアの選択肢が増えることは研究者にとっても非常に大きなメリットと言えるのではないでしょうか。
給与や満足度の高い仕事に就ける可能性が高い
これについては、内閣府によって作成されたe-CSTI(仕事のやりがいや年収などを学位や年代などの項目別に可視化できる便利なツール)を使って説明していきます。
上の右側の図では、縦軸に年収レベル、横軸に仕事の満足度をとっています。
縦軸の年収レベルに注目すると、博士卒(赤丸)は年収600万円台後半から約1000万にかけて3つの大きな母集団があり、全体的に年収レベルが高水準にまとまっている傾向が見られます。
統計的にみても、博士号をもつと高年収になる可能性は高いと言えそうです。
横軸のやりがいについても、博士卒(赤丸)は修士卒(黄丸)よりも高い傾向があり、左側の図をみると、やりがいは専門分野と業務の関連度合いと比例関係にあるようです。
つまり、博士卒の人は専門性を活かした仕事をしている人が多く、やりがいを強く感じられているのだと考えられます。
博士進学のメリット5選
ここからは、博士課程に進学するとどんなメリットがあるかを説明していきます。
結論、私はこの5つだと思っています。
- 楽しいことをとことん突き詰められる
- 突き抜けた専門性が身に付く
- 社会で活きる汎用スキルが練磨される
- 自分の成果を世界に発信できるチャンスが多い
- 博士コミュニティが拡がる
楽しいことをとことん突き詰められる
「ここまでやってきて、ようやく成果が出始めた頃なのに…」そう思いながら修士で卒業する後輩を何人も見てきました。
修士卒で企業就職した場合、1年目から専門分野を活かせる研究職になれる可能性は低く、なれたとしても会社の方針で研究テーマが急に変わることもあります。
一方、博士課程ではさらに約3年間、今のテーマを思う存分深めることができます。
学会発表や論文投稿も活発に行い研究者同士のつながりがふえていくと、自分の研究成果をもとに新しいプロジェクトが生まれることもあります。
研究留学や、研究成果の事業化に挑戦する人もいます。
自分なりの「楽しい」をとことん突き詰めることができるのは、博士課程ならではの大きなメリットといえます。
突き抜けた専門性が身に付く
博士課程では、約3年間をかけて1つのテーマを極めていきます。
実験や解析、考察などをするために実に多くの論文を読み込み、新しいことを勉強し続けなければなりません。
論文を執筆する際には研究のオリジナリティを強調するために、同じ分野の論文に一通り目を通さなければなりません。
このように文献調査や勉強、論文執筆を繰り返していくうちに突き抜けた知見がついていくのです。
社会で活きる汎用スキルが練磨される
博士課程ではあらゆるスキルが磨かれます。
例えば、限られた時間の中で成果を出すことが求められますので必然的にタイムマネジメント力が身に付きます。
日々、研究結果について教授たちと議論を交わしますが、冷静に考えて、教授というのは一流の研究者です。会社で例えるなら研究統括部長とかのレベルです。
そんな方にもまれ続ける博士課程では、論理的な思考力や説明力が確実に研ぎ澄まされていきます。
また、世界中の研究者を相手に何度も論文投稿や学会発表を行い、給与や研究費をもらうために研究企画書を作成することもあります。
これらの場面では、時には文章で、時にはディスカッションで、自分の研究成果や主張を簡潔かつ明瞭に伝えなければなりません。
博士課程で、これらを何度も経験するうちに論理構成力や文章執筆能力、英語力、プレゼンテーションやディスカッション能力等、社会で必要とされる汎用的な様々なスキルが練磨されていきます。
企業に就職した場合も、確かに基本的なスキルは身に付いていくでしょうが、修士卒直後の3年で、世界中の一流たちを相手にした論理戦は、ほとんど経験できないでしょう。
自分の成果を世界に発信できるチャンスが多い
博士過程では修士課程の時よりも成果が増えてくるため、多くの学会発表や論文投稿、特許申請などを行えます。
素晴らしい成果を挙げると学会側から招待されて講演をすることも珍しくありません。
自分で進めてきた研究成果を世界に発表し、それに対して反響が返ってくると非常に嬉しいものです。
対して、企業に就職した最初の3年で、例えば新技術の開発の一部分に貢献はできても、修士を出たばかりの新人のうちに研究成果を世界に発信する経験はなかなかできないと思います。
企業の研究職では会社の方針で成果発表に制約があることも多いですが、博士課程では自分次第でたくさんのアウトプットができます。
そんな自由度の高さも進学の魅力の1つだと思います。
研究者コミュニティが拡がる
学会発表や研究会に定期的に参加していると、外部の研究者から声をかけられたり、自ら話しかけたりする機会が増えていきます。
また、学会期間中にはたくさんの交流会が開催され、学会の度に参加していると他大学や企業に属する幅広い年代の研究者やエンジニアと徐々に関係が深まっていきます。
何気ない会話からヒントを得て研究が大きく進展することもありますし、それだけでなく、外部の研究者と繋がっていると、学生の身でありながら、各大学や企業での最先端の研究情報が入ってくることが多くあります。
さらに、博士コミュニティは博士卒業後も関係が続くことが多く、後に研究ポストを紹介してもらい、仕事をゲットする、なんてことも聞きます。
そして、博士号を持っている人や博士学生は、基本的に仕事がデキル方が多く、将来的に、分野を代表する研究者や会社の重役になる方も多いと思います。
偉大な先輩博士のお話からはいつも大きな刺激をもらえ、自分も頑張ろうと思わされます。
このように切磋琢磨できる関係性が拡がっていくことも、進学の大きなメリットといえるでしょう。
博士進学のデメリット4選
ここからは、僕が考える進学のデメリット4つをお話していきます。
- 金銭面の余裕がすくない
- 社会に出るのが同期よりも遅れる
- 成果を出さなければいけないプレッシャーに追われる
- 専門外の知識に疎くなりがち
金銭面の余裕がすくない
博士課程ではお金の余裕があるとは必ずしも言えません。
なぜなら、企業と違い基本的に給料を貰えないないからです。
加えて、博士課程への入学料と毎年の授業料も支払わなければなりません。
例えば国立大学の場合、入学料が約282,000円、授業料が約530,000円/年ですので、単純に考えれば3年間で約1,870,000円かかるわけです。
私立になるともっと高くなります。
(ただし、大学によって、修士過程から博士課程へ学内進学する場合は入学金がかからなかったり、授業料の半額・全額免除制度もあったりしますので、学費負担がもっと少なくなることも大いにあります)
したがって、日々の生活費に加えて進学にかかるお金をどうにか工面する必要があります。
主な方法には以下のものがあるでしょう。気になる方はぜひチェックしてみてください。
- 貸与型 or 給付型奨学金をもらう
- 博士課程教育リーディングプログラムをうける
- 普通のアルバイトでかせぐ
- 大学のTAやRAの仕事でかせぐ
- 日本学術振興会の特別研究員に採用される
- 仕送りをもらう
社会に出るのが同期よりも遅れる
進学した場合、社会人になるタイミングが修士卒の同期よりも約3年遅れることになります(大学や業績によっては短縮できる場合もあります)。
実態はどうあれ、世間一般の多くは博士課程に通う人を、学部生や修士生と同様の“学生”と認識します。
それ故に、博士学生はかなり肩身の狭い思いをする場面が多々あるかと思います。
例えば、小さいところでいえば、親戚や友人などに「その歳でまだ学生やってるのか」とか「まだまだ遊べていいなぁ」といわれ、チクっときます(笑)
大きいところでいえば、結婚を決意して両親へ挨拶する時に「職に就いていないのに結婚して大丈夫?」と難色を示される可能性があります。
普通に就職していればきっと感じなかったであろう複雑な気持ちを抱えることが多い、という意味ではデメリットといえるかもしれません。
ちなみによく聞くのが、3年の遅れが会社での出世に響くのでは?という意見ですが、個人的には、たった3年の差が会社での出世に響くとは思いません。
むしろ、従来の年功序列制度がくずれて成果主義にシフトしていく流れにおいては、博士号を持っていること自体やそこで磨かれた成果への執着心や専門性が、有利に働くと思っています。
成果を出さなければいけないプレッシャーに追われる
博士号を取得するためには業績が求められます。
多くの場合、業績とは査読(論文内容に関する厳しい審査)がある学術雑誌への掲載本数と学会発表回数のことを指します。
なので博士学生は、多かれ少なかれ、学術雑誌に掲載されるような研究成果を出さないといけないというプレッシャーに追われます。
早いうちに成果が出れば比較的気楽に研究できますが、成果が出ないと精神的にかなり辛い思いをする可能性があります。
企業に勤めた場合でも同様のプレッシャーはあるかもしれません。
しかし、博士学生の場合だと、お金や年齢のこともあり、精神的に追い込まれてしまうと「成果が出ず卒業できなかったら、社会人経験ゼロの、ただただ特定の分野に超詳しい27歳になってしまう…自分の人生は大丈夫なのだろうか」
という特殊な強迫観念に駆られる可能性がある、ということを頭の片隅においていてもいいかもしれません。
専門外の知識に疎くなりがち
博士学生は専門分野に関しては知識が深くなる一方で、少しずれた分野になると途端に知識が薄くなる傾向にあると思います。
なぜならば、研究室には自分と似た分野を研究する先生や学生しかおらず、そもそも別分野に触れる機会が少なく、別分野の知識を体系的に学ぶ環境が身近に整っていないからです。
一方、企業では過去の研究プロジェクトの概要が報告書として明瞭簡潔にまとまっていることが多く、別分野の知見を比較的かんたんに得ることができます。
また、大企業であれば、あらゆる専門分野を体系的に学べる研修制度が整っており、受講が義務化されていることもあります。
ほかにも、同じ研究グループの中に、多ジャンルの研究テーマを転々としてきた経歴を持つ人もよくいるので、聞けば別分野の知見をすぐに教えてくれることが多いです。
幅広い分野の知識を得るのにある程度の時間と労力がかかる、という点は博士進学のデメリットといえるかもしれません。
博士進学を考える上で、確認しておきたい2つの重要なこと
ここまで博士のメリットデメリットを述べてきましたが、そもそも博士号の学位取得は学士や修士よりもはるかに難しく、自分の努力以外にも重要な要素があると考えています。
ここでは、博士進学に際して私が重要と考える2つの点
- 博士課程での研究方針にある程度見通しがたつか
- 研究に専念できる環境かどうか
について説明しますね。
博士過程での研究方針にある程度見通しがたつか
簡単に言えば、博士課程3年間をかけて深めていく研究テーマが頭に浮かんでいるか、ということです。
明確なスケジュールになっている必要はありませんが、3年間を費やすわけですから、ある程度見通しを持っておく必要はあります。
例えば、「修士までの研究の延長かなぁ」くらいではややザックリしすぎです。
少なくとも、
- 何を研究目的としている
- どのようなアプローチで行うか
- 新規性はあるか
- 博士の学位を取得するだけの価値があるテーマといえるか
という点はある程度考えておいた方がよいです。
同じ研究室への進学を想定している場合、基本的に修士までの研究を軸に、先行研究を調査しながら考えていきます。
ただすべてを自分で考えるのは厳しいので、進学を悩んでいることを打ち明けるのと同じタイミングで、教授と博士に進学した際の研究の方向性を話しあうのがいいと思います。
きっと教授も親身になって相談に乗ってくれる思いますよ!
研究に専念できる環境かどうか
ここでいう環境とは、研究設備に加えて、研究室の運営体制や人間関係、研究資金の余裕までを含みます。
研究のプランが明確でも、例えばそれを実施できるだけの実験装置や研究費の余裕がなければ意味がありません。
これら研究設備や研究費については、教授と研究方針を話すときと同じタイミングで相談して考えていけば大丈夫です!
また、研究室内の人間関係に関しては、例えばハラスメントが横行していないか、困ったときに頼れる教員はいるかといった点も大事です。
中でも、教授との相性はもっとも重要だと考えています。
なぜなら、博士の研究は教授の指導やサポート無しで成し遂げることはほぼ不可能といっても過言ではないからです。
実験結果に関する議論や研究方針のアドバイス、執筆論文の添削といった技術的な指導、その他キャリアなどの悩み相談といった精神的サポートまで、教授とは多くの点で深く付き合うことになります。
経験上、信頼関係を築くのが難しいと感じる教授の下で3年間も博士の研究を続けるのはなかなか難しいと思います。
博士か就職か、私が最終決断をした際の手順6ステップ
さて、ここからは、進学か就職かなやみになやみまくった私が、最終的に決断に至った具体的な手順を6ステップで紹介します。
その6ステップとは、ずばりコレです!
- 博士に進学したいと思う理由を書き出す
- 不安な気持ちをありのまま書き出し、根底にある原因を見つける
- 原因を解決できる方法がないかどうか調べる
- 解決策を実施した上で、不安をどこまで許容できるか考える
- 進学したい理由と比較する
- 自分の信念や人生観も加味して決断する
1つずつ説明していきますね!
1.博士に進学したいと思う理由を書き出す
まずは何で博士に行きたいと思うのか、その理由を書き起こしてみます。
より具体的に考えていき、自分の心の底にある感情や欲求まで掘り下げていくことがポイントです。
・今の研究テーマが楽しくて、もっと続けたい!
・具体的にいうと、自分の考えた実験アプローチが前例のないもので、「世界で自分しかしていない」という唯一無二の感覚に、武者震いする
・独自のアイディアで挑戦していけるところがワクワクする
・失敗ばかりだけど、たまに成功すると本当に嬉しく、くせになる
2.不安な気持ちをありのまま書き出し、根底にある原因を見つける
進学を不安に思う気持ちをありのままに、どんどん書き出してみましょう。
言葉にするのが難しいと感じても、どうか頑張って言語化してみて下さい。
その過程で、モヤモヤしていた気持ちが徐々に整理されていき、自分を客観視できるようになります。それだけでも不安はかなり軽減されるかと思います。
その上で、「なんでこれを不安に思うのか?」とか「これって単なる思い込みじゃないのか?」というように、あらゆる角度から自分に問いつづけ、奥底にある本当の不安原因をあぶり出します。
意外と、世間一般の漠然としたイメージに踊らされているだけだった、ということもあります。
●不安1:成果を出して博士号を取得できる自信がない
なぜ?→論文投稿や学会発表を何度もこなしていくイメージが湧かない
なぜ?→著しい結果がまだ出ていないくて、これらの経験が無いから
●不安1の原因:まだ結果を出せていないという焦り
●不安2:卒業後、就職できるか不安
なぜ?→ネットで博士は就職しづらいとの記事をよく見かけるから
本当に?自分の分野にも当てはまる?→ネット情報に踊らされているだけかも
●不安2の原因:博士の就職状況に関する正しい情報を知らない
3.原因を解決できる方法がないかどうか調べる
ステップ2で分かった原因を解決できそうな対策があるのか、あればどのようなものがあるのか調べていきます。
自分で考えて解決策をひねり出してもいいですし、書籍でもネットでも、先輩や先生に聞く、でもかまいません。
とにかく情報を集めます。
●原因1:
・実験方法について教授にアドバイスを求めてみる
・書籍を読んで研究への取り組み方や時間の使い方を改善する
●原因2:
・自分と同じ研究科を卒業した博士取得者の就職状況を確認する
・博士専用就活サイトを調べてみる
4.解決策を実施した上で、不安をどこまで許容できるか考える
このステップがかなり重要です。
解決策を実行したとしても不安が全て完璧に解消するわけではありません。
なので、「この不安については最悪の事態になっても大丈夫だと思えるけど、もう一個の不安についてはやっぱり怖いとかんじてしまうな…」といったように、起こりうるケースを想定しながら、自分が許容できる範囲を考えていきます。
同じ条件でもそれを大丈夫と思えるか怖いと感じるかは人それぞれです。
自分の本当の気持ちと向き合うことが重要です。
よくわからないなあっていう人は、最悪のケースが生じた場面を想定してみて、ポジティブに捉えられるかネガティブに捉えてしまうか、という視点で考えてみるといいと思います。
●不安1:
・「書籍のインプットを実践しながら悪戦苦闘する経験がいつか財産になると思える!」
・「最悪、なにも結果がでず卒業できなかったとしてもまだ27才!何かしらの仕事はできるはず!」
・「そのためにも、博士課程ではどこでも通用するような汎用的なスキルを意識して磨いていこう!」
●不安2:
・「同じ研究科の先輩博士は、ほぼ全ての人が大学で基礎的な研究を継続しているのか…将来は給料が比較的安定している大企業に勤めたいんだよなぁ」
・「就活サイトによると、近い分野で研究者を募集している企業はあまりなさそうだ…ってことは博士課程で身に付く専門性は企業ではほとんど活かせない。それはもったいないと感じてしまうなぁ」
5.進学したい理由と比較する
ステップ2~4で不安やその原因と向き合い、許容範囲まで整理できたら、改めてステップ1の進学したい理由と並べてみます。
ポジティブな気持ちとネガティブな気持ちを見比べてみることで、決断しやすくなると思います。
人生の岐路を合理的に判断できる人は、この段階で進学理由と不安理由をてんびんにかけることで決断できるかと思います!
●進学したい理由:
・「唯一無二の感覚や、自分のアイディアで勝負できるワクワク感を味わえる今の研究テーマをまだ続けたい!」
●不安な理由:
・「結果が出ていない焦りはあるし、今後出る保証もないけど、成長の糧と捉えられるし、最悪の事態も許容できる!」
・「卒業後は企業に勤めたいけど、別分野の仕事しかなさそうで、博士に行く3年間がもったいないと感じる」
6.自分の信念や人生観も加味する
ここまでのステップでは、自分の感情をかなり冷静な気持ちで深堀りしてきました。
でも、やっぱり合理的に決断するってむずかしいんですよね。
私もそうでした。
そういう人は、最後に「どんな人生を歩んでいきたいのか」を大事にするのがいいのかと思います。
「キャリアパス」の視点でもいいのですが、出来るならば、もっと広い観点「自分の信念や人生観」を考えてみてください。
例えば、「やらなかったことを悔やむ人生よりも、やったけどうまくいかなかったと悔やむ人生のほうがいいと感じる!」とか
「楽しいと思えるか否かは自分次第だ!いま不安を抱えながら進学しなくても、また別のところで見出せばいいじゃん!」とかです。
ここまで考えれば、もうできることはほとんどないと思います。
ステップ5の理由にステップ6の人生観も加え、勇気をもって最後の決断を下します。
たしかに、将来は別分野の仕事になるかもしれない。
でもそれよりも、今楽しいと思えることに出会えていること、それを続けられる環境にいることは本当に幸せなことだ!
自分はこの気持ちを大切に生きていきたい!後になってやらなかったことを悔やむ人生はイヤだ!
よし、進学することにしよう!
最後に
今回は、博士号を取得する意義から、進学のメリットとデメリット、そして最後に、私が進学か就職かを決めるに至った具体的な手順をお話しました。
最終決断にいたる過程では自問自答を繰り返すため、難しくて時間がかかる人も正直いるかと思います。
自分の人生観まで改めて真剣にかんがえることなんて、本当に少ないですもんね。
私は、このように思い悩んだ時は色んな人の人生を参考にしています。
本やネットでも見ると、みんなそれぞれ色んな価値観をもって人生を歩んでいることに気づけます。
その中で、境遇が似ていると思った人に自分の価値観を重ねてみるのもいいでしょうし、あるいは、こんな人生を送りたいと思える人の考え方をとりいれてみるのもいいでしょう。
また、自分の気持ちを整理するには、経験上、信頼できる人に相談してみるのがおススメです。人と話していると自分の考えや価値観が浮き彫りになることが多いと思います
私も、当時の博士学生だった先輩と何度も夜通し語り合いました。
ただ、毎日毎日考え込み過ぎるとしんどくなります!意識的に気分転換をしてくださいね!
かなりの長文になりましたが、この度は目を通していただき、ありがとうございました。
この記事が、悩める理系学生にとって、わずかでも参考になれば幸いです。
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