こんにちは、小心者ハカセのただなおです。
修士や博士課程に進学した理系学生の皆さん、研究ってうまくいっているときはホントに楽しいですが、一方でつらい時もたくさんありますよね。
うまくいかない日が続くと、自身の研究者としての資質に疑念が生じ、これまでの成果はただ運が良かっただけだったかのように感じられるものです。
そしてまた、毎日研究を頑張っている人ほど「研究だけが全て」で、「成果がでなかったら、あるいは学位がとれなかったら、自分の人生がすべて終わり」かのように感じ、「これまでの努力すらも無駄だった」ようにも思えてきて、自分の存在価値にすら疑念がわいてくるのです。
それでもなお、期待してくれる先生や家族のために、学部や修士で先に社会に出た元同期に示しをつけるために、成果をバンバンと出す周りの同世代に笑われないために、ここまでやってきた時間をムダにしないために…ここで研究を辞めるわけにはいかないんだと他の選択肢に無意識にフタをしてしまい、余計に自分の首をしめてしまいます。
わたしが断言しましょう。
『研究が上手くいかないからって、研究以外の道に進んだからって、人生は終わりません、絶対に』
何を隠そう私も、順調だった修士課程の勢いそのままに進学した末に博士課程で壁にぶち当たり、自分が生きている意味を考え込むまでに病んでしまった一人です。
当時、少しでも楽になりたくてあらゆる本を何十冊も読みまくり、そしていくつかの本に出合えたことで
- 自分の視野が狭まっていたこと
- 研究以外に沢山の働き方や生き方があること
- 自分の人生なのに周りの目を気にし過ぎていたこと
- みんな違ってみんないい、ということ
に気づき、ココロが救われました。
この記事では、鬱になる寸前まで病んでいた私の凝り固まった思考回路をほぐし、視野を広げ、そしてココロを楽にしてくれた4つの本を紹介します。
研究がつらくて、でも色んな人の顔が浮かんできて辞めるのも怖くて、もうにっちもさっちもいかないんです…という方は是非よんでみてください。
ではいきましょう!
ご存知の方も多いとおもいますが、一時期「人生100年時代」で旋風を巻き起こした、アンドリュー・スコット、リンダ・グラットン著「LIFE SHIFT」のマンガ版です。
原本も読みましたが、マンガの方が短時間でエッセンスをつかめて分かりやすかったのでコチラを紹介します。
この本では、長寿化がすすむこれからの時代、これまでの多くの人が歩んできた「教育」→「仕事」→「引退後の余暇」という画一的な3ステージで進める人生設計では限界があることが指摘されており、これからの人生100年時代においては、教育、仕事、余暇を何度も行き来するマルチステージの人生が到来すると述べられています。
仕事ステージも長期化するため、より流動的にキャリアを形成していく柔軟性が重要で、キャリアの移行期間に教育の受けなおしやボランティア、余暇を楽しむという選択肢もアリになってくるわけで、これからの時代は個々人の人生やキャリアがより一層多様化していくわけです。
近年ではすでに副業によるマルチワーカーや転職者が増え、”リスキリング”による個人の学びなおしも推奨されており、「高学歴の大学に入って、世間体のよい安定した職に就き、一つの仕事を定年まで全うする」人生がベストとされてきたこれまでの風潮は崩壊しつつありますよね。
研究に置き換えるなら、研究者一筋でキャリアを積んでいくこと人も、研究を辞めて異なるキャリアに切り替える人も、各人がそれぞれのキャリアを形成しているわけで、その選択に優劣はないはずです。
そもそも人生にいいも悪いもなんですけどね…
自分自身に3ステージ人生の古い価値観がこびりついていたことを痛感します
これまで「研究あるいは大学院を辞めること」に対して無意識に「逃げ」や「甘え」というネガティブな捉え方をしてしまっていましたが、この本を読んでからは「次のステージに移行すること」とポジティブに思えるようになりましたし、ここまでの研究キャリアはマルチステージのうちの1ステージにすぎず、通過点であるという認識になり、「別にここで研究やめても人生終わりじゃないな」と思えるようにもなりました。
研究で培った汎用的なスキルは次のステージで必ず活かせますしね!
キャリアを手放す勇気
東大卒後マッキンゼーに勤めていた著者、石井てる美さんが、一見華々しいキャリアを手放し夢だったお笑い芸人になるまでの苦悩、葛藤が生々しく書かれています。
マッキンゼーでの日々の激務や上司とのやり取りで精神的に追い詰められていっているにもかかわらず、それまでの受験や就職で「頑張ればどうにかなってきた」人生の中でいつの間にか形作られてきた歪んだプライドや見栄のせいで「マッキンゼーでも完璧なキャリアパスを築かなければおわり」と自分をがちがちに縛って辞める選択肢を遠ざけ、結果的に死すらよぎるほどに病んでしまった著者。
悩んで悩んで悩み切った末に、ある日「そもそも仕事のために生きているのではないよな。なに『マッキンゼー』だからって振り回されてるのか。自分が人生のハンドルを握っていくらでも好きなことをすればいいじゃないか」とようやく歪んだプライドが消え去り、昔から本当は挑戦してみたかったエンターテインメントの世界に飛び込む決意をしたのでした。
この著者ほどではないにしても自分の状況と重なる部分が多く、読んでいてとても共感しました。
自分と似たような心の葛藤を経ている著者に自分を重ね、最終的にキャリアを大きく変える決断を下した著者の姿に大きな勇気をもらえますし、本当に辛い時は逃げていいということを全力で肯定してくれる力強い言葉にも心が救われる思いがしました。
また、この本のおかげで、研究で順調に成果がでて周囲からすごいとそそのかされてきたために、自分の中にも変なプライドが作られていたこと、それ故に家族や先生、元同期や身近な博士学生からどう思われるかを気にして「大学院を辞めてもいい」選択肢にフタをしてしまっていることに気づくことができました。
「他人の人生じゃなく、自分の人生なんだ。別に辞めたいときはやめていいんだ」と、晴れ晴れした気持ちになりました
出世しなくても幸せに働けます。複数の仕事で自分を満たす生き方
マイクロソフトにてシビアな出世競争で勝ち抜くために日々猛進しながらようやくつかんだマネージャー職で、2度のマネージャー失格の烙印を押されるという挫折を経験し自分をすっかり見失った著者、中村龍太さんが、転職きっかけに成り行きで複業を始めたことで、今まで以上の充足感に満ちた毎日を送れるようになるまでのストーリーや、複業家として幸せに生きていく具合的な方法が書かれています。
著者が提唱する複業とは、「ドローンによる動画撮影」「アウトドアグッズ全部貸し出しサービス」「本格パエリア料理教室」など、無理しない範囲で自分の興味の赴くままに人にありがとうと言ってもらえることを複数掛け持ちすること。
この複業を通じて、自分にしかできな価値を提供して誰かの役に立てていることに喜びを感じ、そんな活動をしている自分を好きになるという好循環が生まれ、ただただ出世を目指してもがいていたサラリーマン時代とは違った貢献感や個性的なスキルアップ、多様な人間関係を築けていることにより大きな幸せを感じるようになったと書かれています。
成果を出すことが是とされる研究の世界に染まり、何をするにしても周りより多くの業績を、周りよりも優れた成果をと、ひたすら上を目指し続けなければ生きていけないと思い込んでいた自分に、研究だけが、あるいは上を目指すことだけが幸せになる方法ではないこと、そして自分の興味を連ねていく複業という選択肢もあることを提示してもらえたことで、ふっとココロが楽になりました。
減速して自由に生きるダウンシフターズ
この本の著者、高坂勝さんは元々、大手小売会社で出世街道を走るサラリーマンでしたが、仕事上のストレスでうつ目前までいったことをきっかけに、ストレスを抱えながら自分の時間を削ってまで必要以上のお金を稼ぐよりも、自分に必要な最低限のお金を小さく自営業で稼ぎ、あとは余暇の時間、自分のやりたいことに時間を充てるという生き方を選択しました。
あれもこれも欲しいと欲のままにモノを買うためには結局働かざるをえなくなり、自分の時間も減っていきます。
「自分が本当に幸せを感じられるモノだけをそろえて不必要なモノを手放す。お金をかけるよりも手間暇をかける。働き過ぎない、頑張りすぎない。円よりも縁を増やそう。」
さらに著者は、自分で田んぼを開拓してお米と大豆の自給も始めることで、五感で大自然を感じる素晴らしさに気づくと共に、何があっても食いぶちは大丈夫だという自信も手に入れています。
自分が本当に欲しいものは何か、本当に欲しくないものはいらないという価値基準と根拠と自信がしっかりあれば、こんな生き方が可能だと述べられています。
私にとってこのような生き方、価値観は目からウロコでした。
「働く=キャリアを築く」という考え方自体が一つの固定観念であり、昨今の過剰な消費社会システムを自ら降り、自分の身の丈にあった働き方でのびのびとやりたいようにやる選択肢もあるのかと気づかされ、自分の視野の狭さをぶっ壊してもらえました。
あらゆる生き方、働き方、価値観があって、その数ある選択肢の中から自分は今たまたま「研究者として働く」ことを選んだだけで、研究が仮に上手くいかないのならただ別の選択肢を選べばいい、ただそれだけの話なのに、一体それのなにに悩み苦しむ必要があるのか、と一歩引いたところから自分の悩みを捉えることが出来るようになりました。
まとめ
「”研究者としてのキャリアを築く、あるいはそのために大学院を修了する”というのは、無数にある生き方、働き方の中のほんの一つの選択肢にしかすぎない」
今回紹介した本は、「研究だけが全て」という凝り固まった思い込みをしていたかつての私に、そんな気づきを与えてくれ、研究で病んで辛くなっていた私のココロを軽くしてくれました。
改めて最後にまとめておきます。
みんな違ってみんないいんです。
なので、別に大学院を途中でやめてもいいし、このまま頑張って学位を取って研究者としてあるいは研究以外の道を進むのもいいし、研究者としてしばらく働いたのちに全然違う道に進むのもいいんです。
皆さんが生きている人生は、他人のものではなく皆さん自身の人生なわけですから。
さて、以上になります。
今回の記事で、どなたかの不安を少しでも軽くできていたら幸いです。
ありがとうございました。
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