こんにちは。小心者ハカセのただなおです
博士課程が最近辛くなってきて中退を考えているんだけど…実際のとこ中退ってどうなんだろ
中退にメリットとかあるのかな…
大学院に進学して博士課程まで進んだものの、研究熱が冷めたり他にやりたいことが見つかった等で、博士課程を辞めることを考える人も結構多いと思います。
実際、国内の博士課程に通う3000人以上もの人が中退していることを示すデータもあります。
>>博士課程の中退は多いのか?博士の中退率と中退理由について
今回の記事では、博士課程を中退するメリットとデメリットについて説明したいと思います。
そもそも博士学生はどんな理由で辞めるのか
博士課程を中退する主な理由としては
- 就職する
- 金銭面が厳しい
- 研究がうまく進まない
などが挙げられます。
就職する
博士課程を辞める理由として多いのは「就職」で、文部科学省の調査では約4人に1人が就職を理由にやめています。
就職したいと思った理由は人によって様々でしょう。
例えば、博士の研究とは別に企業でやりたいことができた、人間関係などの外部環境が辛くなり就職した、先に就職してビジネス経験を積んでいる同期を見て就職したくなった、など、いろいろあると思います。
いずれにしても、少なくとも4人に1人はそこで就活に気持ちを切り替えて行動に移すことで、うまく就職できている、という風にもかんがえることができます。
金銭面が厳しい
金銭的な事情で博士を中退する人もいます。
というのも、博士学生は基本的に給料がもらえません。
日本学術振興会の特別研究員(DC1、DC2)など給料がもらえる制度もありますが、採用率は狭き門でみんながもらえるわけではありません。
そのうえ博士学生は授業料も払わなければいけません。
国立大学でも約53万円/年、私立ならこれ以上の負担額になります。
各大学に授業料免除制度もありますが、これもまた条件を満たす人のみです。
こうした金銭的困窮性を救済するべく、各種奨学金制度もありますが、貸与型は本質的には借金ですし、返済義務のない給付型もこれまた条件が伴います。
こうした事情で、学内外でバイトをしながら研究している学生さんがいるのも事実です。
このような金銭的負担に耐えられず、博士課程を中退する人も少なからずいます。
研究がうまくいかない
研究がうまく進まないことも博士課程を辞める1つの理由です。
というのも、研究進捗が滞り成果が上がらなければ、博士課程を修了して学位を取得することが困難になるからです。
博士課程は一般学術誌に主著論文を出版したうえで、博士論文としてまとめ、複数にわたる審査・口頭試問・博士論文修正をクリアして、ようやく修了となります。
研究で目ぼしい成果が出ないと学術論文を執筆できないため、3年で博士号を取得できない可能性が高くなります。
そもそも研究は頑張ればみんな必ずうまくいく、というものではなく、少なからず運の要素もあります。
博士修了の見通しが悪くなったら、はやばやに博士課程に見切りをつけて、別の道に進んで行く人もい一定数いるのです。
博士課程を中退するメリット
それでは、博士課程を中退するメリットについて説明していきます。
私は以下の3つがメリットと考えます。
一つずつ見ていきましょう。
メリット1.学費出費がなくなる
中退すれば学費を支払う必要がなくなります。
仮に国立大学の博士課程1年次に中退すれば、あと2年分の少なくとも約100万円の授業料は浮かせられます。
また、博士課程の場合は3年で修了できるとも限らないため、博士4年次、5年次とずるずると留年するとそれだけ授業料がかさむことになります。
早い段階で博士課程に見切りをつけられるほど、金銭的負担は減らせることになるでしょう。
そのうえ、もし就職できれば給与がもらえるため、それまでの貧乏生活から脱することも可能です。
メリット2.若い年齢で就活できる
博士課程を早くやめればその分だけ若い年齢で就活に臨めるため、企業が重要視する『若さ=ポテンシャル』を売り出した就活がしやすくなります。
そのため博士卒よりも他の分野への就職もしやすく、かつ社会に出るのが早い分違う分野でのキャリアを積むことができます。
博士卒後のキャリアをあまり考えず惰性でだらだらと博士課程を続けてしまえば、博士を修了できても就職は厳しいでしょう。
むしろ何かやりたいことがあって意欲的な人材なら、ポテンシャルを見込まれて雇ってもらえる可能性は十分にあります。
メリット3.学位取得のプレッシャーから解放される
中退すれば、『学位取得のために成果を上げる』プレッシャーから解放され、精神的に一気に楽になります。
中退を考えている人の中には、研究が進まず成果の重圧の押つぶされそうだけど、中退することへのためらいもあり、なんとか耐えようと苦しんでいる人もいると思います。
個人的にその様な人には『人生は研究が全てではない』ことに気づいてもらいたいと思います。
別に博士課程をやめたからって人生は終わりませんし、あなたの中退を知る人はごくごくわずかです。
一度中退を決心するとこれまでの重圧と苦悩から解放されるとともに、視野がひろがり自分の人生を再び歩みだすきっかけもつかめるかもしれません。
中退のデメリット
続いてデメリットも見ていきましょう。
デメリットは以下の3つです。
デメリット1.中退を背負った就活になる
博士課程を辞めて就活に臨む際はどうしても『中退』というハンディを背負ったスタートになることは避けられません。
人事にしてみれば、ストレートの新卒者と比べた時に「この学生は入社してもやめるのでは?」という先入観から入ってしまう分、就活では不利になります。
しかしながら、ちゃんと前向きな理由があり、企業でも意欲的に働けることを明確に伝えることが出来れば、きちんと就職はできます。
デメリット2.学校推薦が使えない
中退をすると学校や教授の推薦がつかえないため、基本的に自由応募の形で就活することになります。
理系であれば使えることの多い学校推薦は自由応募よりも内定をもらいやすいため就活では有利になるのですが、中退すると推薦枠による就活ができません。
専攻分野によっては博士卒対象の推薦枠もあるため、博士を修了しておけば使えた推薦カードが使えなくなってしまうというのはデメリットの一つといえるでしょう。
デメリット3.初任給が修士卒相当になる
博士課程を中退すると最終学歴が『修士卒』となるため、初任給は修士卒相当になります。
もし入社時の給料を上げたいのであればあきらめず博士課程修了を目指すか、中退して給料の高い業界への就職を目指す、専門スキルを磨く、資格をとって市場価値を高めるなど、相応の努力が必要となります。
とはいいつつも、あくまでも修士相応なのは初任給だけです。
経験や成果を積み上げ昇給していけば、最初の数年分の給与の遅れを挽回することは可能です。
博士課程を修了するメリット
ここまで中退のメリットデメリットを見てきました。
ただ本当に後悔のない判断をするためにも、ここで今一度、博士課程を修了するメリット・デメリットも考えていきたいと思います。
まずはメリットですが、私は以下の4点だと考えます。
ひとつずつ見ていきましょう。
メリット1.博士号が必須の仕事に就ける
博士号を取ると大学の先生や公的研究機関の研究者として勤務することができます。
これらの研究職では博士号の取得が採用条件となっていることがほとんどで、修士以下の学位ではこれらの職には就くことができません。
大学教授にあこがれている人はやはり博士号はマストです。
メリット2.研究者として海外でも活躍できる
博士号の肩書きがあれば海外でも研究職として働きやすくなります。
というのも日本企業では修士卒でも研究職になりやすいですが、海外では博士号を持っていないと研究職として採用されづらいといわれます。
海外ではそれだけ研究開発における博士号の価値が重く捉えられているのです。
海外のほうが博士号に価値を置いている傾向は、博士号取得者の給料を比べるとよくわかります。
visionの記事によるとアメリカの民間企業では平均で約1130万円ほどもらえますが、日本では400~500万円の割合が高く(下の図)、明らかにアメリカのほうが処遇が良いのです。
海外で研究者としてバリバリ働いて稼ぎたいかたは博士号を取っておくことをおススメします
メリット3.修士卒よりも将来的に高給となる可能性が高い
国内企業では博士卒になっても処遇は修士とほぼ変わらないとよく聞きますが、とはいえ実は国内でも博士卒のほうが給与が高い傾向がちゃんとデータで示されています。
リクルートワークス研究所の記事によると学歴ごとの平均年収は以下のようになっています。
学部卒 | 修士卒 | 博士卒 | |
人文科学・社会科学 | 406.1万円 | 524.9万円 | 566.9万円 |
自然科学 | 460.2万円 | 592.3万円 | 656.5万円 |
医学・薬学 | 594.3万円 | 626.8万円 | 1095万円 |
どの学問分野でも博士のほうが上回ってるんだね…
医学・薬学系では博士の給与が高いとよく聞きますが、自然科学(理系分野)も人文・社会科学(文系分野)でも博士の平均年収のほうが上回っています
より高収入となる可能性を高めたい方は博士号取得を目指したほうが良いかもしれません。
ちなみに博士卒は年収が高いだけでなく、専門性と合致した仕事に従事できるため仕事へのやりがい・満足度も高い傾向にもあります。
>>博士進学を悩む理系学生へ!博士のメリット・デメリットと決断方法を伝授!
メリット4.今の研究を継続できる
当然ですが博士課程をやめなければ今の研究を継続できます。
中退したいと思う理由が研究内容以外にあるのであれば、このメリットも見逃せません。
なぜなら企業に就職した場合、仮に研究職であったとしても自分が楽しいと思える仕事ができるとは限らないからです。
企業は給与をもらいながらの仕事なので、自分がしたくない雑務や事務処理もしなければならない時もあります。
ずっと楽しいことを追究できていた博士時代には感じなかったストレスを感じることも多々あるでしょう。
ゆえに、中退しなければ思う存分楽しい研究を追求することができます。
博士を修了するデメリット
続いて博士課程を修了するデメリットを説明します。
私が思うデメリットは以下の3つです。
デメリット1.授業料を支払う必要がある
中退するメリットとも被りますが、やはり博士課程に通い続けるとなると授業料がかなり負担になることには変わりありません。
前述のとおり国立大学でも授業料は年間約53万円です。
博士を諦めず、でも金銭的負担を少しでも減らしたい方は、研究成果をあげて授業料免除や日本学術振興会の特別研究員(DC1、DC2)採用を全力で目指すべきでしょう。
デメリット2.社会に出るのがおそくなる
博士を修了するにはほとんどの場合修士卒時点からさらに3年以上かかり、社会に出るときには30歳手前になります。
同学年の学部や修士卒はそのころにはすでに社会人5年目、3年目で実務経験を積み上げ、人によってはチームリーダーを任され始める頃です。
もちろん、博士課程までの研究経験が活かせる仕事ならば、数年分の遅れは長期的にみれば大きな影響とはならないでしょう。
むしろ博士までに深めた専門性・スキル、博士号という肩書きが修士卒との差別化ポイントになり得ます。
>>企業研究職での博士号のメリット4選【修士との違いを入社1年目で実感】
しかし、もし専門分野とは違うことをやりたいと考えているなら、できるだけ早く社会に出てそのスキルを身に着ける努力をするほうが賢明です。
就活においても同じ未経験者なら若ければ若いほうが採用してもらいやすくなります。
中退するにしても、自分が何をやりたいのか、どう生きたいのかを考えておくことが重要です
デメリット3.今の研究環境に耐える必要がある
研究テーマ、研究装置、研究費、人間関係など、博士課程を修了するためには今の環境に身を置き続けなければなりません。
研究テーマはすごい楽しいのに、あるいは博士号をどうしても取りたいのに、教授との相性が悪かったり雑務が多すぎて辛すぎる、というパターンはよく聞く話です。
博士学位を取得するためには学術論文を投稿し、学位論文を研究科に受理してもらう必要がありますが、そのいずれにおいても教授のサポートが必要となり、教授とは切っても切り離せません。
学位を取得するまでは、そのようなツライ環境に我慢する必要が生じます。
博士課程を辞めて就活する際のポイント
では、実際に博士課程を辞めて就活に挑むにはどうしたらいいのでしょうか。
ここでは博士課程を中退しても就活を成功させるためのポイントも紹介します。
>>博士課程を中退しても就活を成功させる5つのポイント
1.しっかりと就活の軸を定める
就活をしようと思ったら、まずは自分の軸を固めて就活の方向性を定めましょう。
就活の軸ときくと尻込みするかもしれませんが、例えば以下のような視点で自分の価値観を深堀りしてみてください。
- どのような人生を送りたいか…価値感
(仕事に没頭したい/家族との時間を大切にしたい/場所に縛られたくない/早くFIREしたいなど) - 働く上で何を重視したいのか…価値感
(事業内容/社会的貢献度/強みを生かせる/給与/ワークライフバランスなど) - 自分の得意なこと・スキルが何か…強み
(得意:文章を書く/モノをつくる/知識を整理するなど、嬉々としてできる生まれ持った才能)
(スキル:専門性/ITスキル/語学/プログラミングなど、後天的に習得したスキル) - どのように仕事で貢献したいのか…職種
(基礎研究/応用開発/営業/経理/人事/マーケティング/企画など)
ポイントは、自分の本当の声に耳を傾けることです。
体裁や世間の目を気にして自分の価値観や強みを活かせない仕事に就いたら、後になって自分が苦しくなります。
就職できてもそれは就活の成功とは決して言えませんよね。
自分の価値観に従って就活の軸が定まれば、自分が企業に求める要素がより明確になるため、企業分析もやりやすくなります。
なので、就活しようと思う人はぜひとも時間をかけて自分の軸を定めてください。
2.中退を前向きにとらえる
博士課程を辞めて就活する場合、面接ではほとんどの確率でその理由を問われます。
その際に「研究が嫌になったので…」「教授との関係が悪くなって…」と他責でネガティブな理由だと人事も採用したいとは思いません。
辞めたい思ったきっかけこそ本当にそうだったとしても、例えば「働いて○○したいと思ったから」「○○にい興味を持ったから」というように、前向きな理由を探してみてください。
ここで上で示した『自分の軸』をしっかりと定められていれば、その過程で「○○したい」と思うことがたくさん思いついているはずです。
そのような自責な理由で意欲的な姿勢を示すことが出来れば、採用される可能性もぐっと高くなるでしょう。
3.既卒枠と新卒枠の両方を使い分ける
博士課程を辞めての就活は基本的に修士卒の既卒として動くことになりますが、企業によっては卒業後3年以内なら新卒として応募できるところも多くあります。
既卒枠だけ狙うと企業の選択肢がせばまるため、企業ごとに応募条件をみて、新卒枠が使えるなら積極的に新卒応募していきましょう。
もし募集要項に明記されていなくて自分が新卒枠と既卒枠どちらで応募するべきが分からない場合は、採用ページから直接問い合わせれば教えてくれます。
4.就活サービスをうまく使う
就活の軸をまず定めましょうといわれても、自分一人ではなかなか難しいでしょう。
そもそも就活が初めての人もいるでしょうし、仮に軸が定まっても企業選びや履歴書・面接対策も一人で進めていくのには限界があります。
なので、就活ではできる限り就活サービスを活用することをおススメします。
例えば、エージェントサービスであればキャリアカウンセリングからあなたにぴったりの企業紹介、履歴書や面接の対策まで、専任のアドバイザーが徹底的に就活をサポートしてくれます。
>>博士課程を中退して就活する人におススメする既卒向け就職エージェント5選
企業選びの効率を上げるために、マイナビなどの一般的な求人サイトに加えて、あなたのプロフィールに興味を持った企業からスカウトが届く逆求人サイトを登録するのもアリです。
>>理系の博士学生におススメするスカウト型就活サイト
そのほか、企業の口コミ、ES・面接情報が見れる「就活会議」や「unistyle」などの過去レポサイトも選考突破率を上げるために重宝します。
>>博士におススメする就活サイト7選
こうした就活サイトは、基本的に全て無料で利用できます。
就活を納得いく形で終わらすためには、このような便利な就活サイトをうまく駆使していくことがポイントになります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
今回の記事では、博士課程を辞めるメリットとデメリットを中心に、博士を修了するメリット・デメリット、実際に就活するうえでのポイントもお話ししました。
最後に博士を中退するメリットとデメリットをまとめておきましょう。
博士を辞めるか続けるかの判断は、簡単に下せるものではありません。
あとから後悔することのないように、ぜひともこの記事だけでなく他にもいろんな情報を見て、いろんな人の価値観に触れてください。
人生は人それぞれ違います。
どんな決断を下しても、後から見ればきっとそれはあなただけの素晴らしいストーリーになるはずです。
皆さんが最良の決断を下せることを心より応援しています。
以上です。長文にお付き合いいただきありがとうございました!
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