5ステップで雑誌会(論文紹介)に最適な論文を選ぶ方法

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研究

こんにちは、小心者ハカセのただなおです

2週間かけて読みこんだけど難しすぎ。もう別論文を読む時間もない。雑誌会オワタ。

雑誌会の論文のいい選び方があるなら知りたい…

今回はこんな声に応えます!

理系の大学生、大学院生ならだれもが頭を抱える「雑誌会」。

ラボによっては、ジャーナルクラブ、論文紹介、ゼミ、輪講とか呼ばれます。

雑誌会を制するうえで、論文選定は非常に重要です。

なぜなら論文選定のミスは「準備時間がムダにかかる+当日炎上する」というダブルの災難につながり得るからです。

今回は、私自身が確立してきた雑誌会におけるベストな紹介論文の選び方を5ステップで紹介します。

この記事を書く私ただなおは、博士卒までに雑誌会で20回越えの発表を経験し、かつ他人の発表も100回以上見てきました!

雑誌会準備はいつから始めるべき?

雑誌会の準備期間についての結論はこうです。

雑誌会準備はいつから始めるべきか
  • 学部生:1ヶ月半前
  • 修士生:1ヶ月前
  • 博士学生:3週間前

※ただし、紹介する論文候補が全く頭にない、余裕を持った準備をしたい人向け

ちょっと長いと思われましたかね?

【紹介する論文候補が全く頭にない、余裕を持った準備をしたい】という方であれば、これくらいは見積もっておいた方がいいです。

準備にフルコミットできる、雑誌会に慣れてる、普段から論文を読み貯めてる人は、上記の準備期間の3分の2でOKだと思います。

私の初めての雑誌会は4週間フルコミットで準備し、「なんとか乗り切れた」という感触でした。その後は、知識と経験の積み重ねにより準備期間が短くなっていきました!

雑誌会準備の流れ

続いて、雑誌会準備の全体像を図で示しますね。はいどん。

準備期間と合わせて示すとこんな感じです。

雑誌会準備における全体の流れ
  1. 論文選定【数日~1週間
  2. 論文読み込み【2~3週間
    質問&回答リストも準備スタート【発表本番まで継続
  3. スライド作成【1~2週間
    原稿の骨組みとなるストーリー構成も考えるスライド作りと並行
  4. 原稿準備【数日~1週間
  5. 発表練習【数日~1週間

準備期間は最長の6週間を前提にして設定しています。

準備にフルコミットできる人、経験・知識がある人は、この3分の2の期間を目安にしてください。

今回の記事では、この1つ目、論文選定について説明していきます。

具体的な論文の選び方5ステップ

以下の5ステップを踏めば、ハズレを引くことはグッと少なくなります。

最適な論文の選び方5ステップ

STEP1. Google Scholarでキーワード検索

STEP2. タイトルと発表年だけ見てどんどんリストアップ

STEP3. 論文の種類・雑誌名・研究グループで絞る

STEP4. アブストラクトと結論で3~5本に絞る

STEP5. 図・グラフ・数式の数と難易度で1~2本に絞る

順番に解説していきますね。

STEP1.Google Scholarでキーワード検索

論文は基本的にネットで調べていきます。

学術論文の検索サイトはどれを使うべきか

学術論文の検索サイトは下記のようにいくつかあります。

私のおススメはGoogle Scholarです。

論文数や検索結果ページで見れる情報量が多く、かつ普通にググる感覚で使いやすいからです。

紹介論文を選ぶときに持つべき視点

紹介論文を選ぶ際は、下記の2つの視点を心がけましょう。

紹介論文を選ぶときに持つべき視点
  • 自分の研究テーマとの関連性
  • 参加者の研究テーマとの関連性

前者は言わずもがな。

忘れがちな視点は後者の「参加者の研究テーマとの関連性」です。

参加者、つまりラボの他メンバーのテーマとあまりにもかけ離れていると…

興味を持たない理解もできない議論も盛り上がらない、という最悪の事態になりかねません。

プレゼンは『参加者にとって有益な時間となるか』を意識して準備しましょう

論文の検索方法

紹介する論文の分野が決まったら、英語でキーワード検索していきます。

コツは以下の3つです。

キーワード検索のコツ
  • いくつかの類似英単語に言い換えてみる
  • 横堀りする:特定のキーワードを同レベルの別キーワードと入れ替える
  • 深堀りする:研究分野を絞っていく方向にキーワードを追加・変更する

例をあげて説明しますね。

例:自分のテーマ「炭化ケイ素(SiC)を使った金属-酸化膜-半導体(MOS)界面の電気伝導特性の向上」の関連論文を紹介するケース

まず、シンプルに

「SiC, oxidation, conductivity」

とキーワード検索できますね。

ここから、たとえばoxidationはざっくりとMOSに言い換え可能なので

「SiC, MOS, conductivity」

と検索できます。

横堀りしていくのならば、SiCの酸化膜はケイ素(Si)基板の酸化膜と同様ですので、

Si, oxidation, conductivity」

というように、材料を切り口に横堀りできます。

深堀りしたければ、例えば電気伝導特性の劣化原因のひとつと言われる点欠陥に的を絞り

「SiC, oxidation, conductivity, point defect

やもうちょっとアバウトに

「SiC, oxidation, conductivity, degradation

言い換えしながら検索していけます!

STEP2.発表年とタイトルだけ見てどんどんリストアップ

ここまでGoogle Scholarではキーワード検索する方法でした。

検索結果のページには論文がずらりと並んでいますね。

ここから、紹介論文の候補を絞りこんでいくステップです。

発表年代でしぼる

まず、発表年代で絞り込みます。

ここで、雑誌会の論文として選ぶときに発表年代をどう考えるか、私の考えを述べておきます。

紹介論文の発表年代についての考え方
  • とくに理由がなければ、最近発表されている新しい論文を紹介する
  • 良質なら古い論文でも問題ない

まずとくに理由がなければ、新しい論文を紹介すればよいです。

分野の最先端の研究はみんな興味ありますしね。

この場合は、直近~5年くらいの幅で条件絞り込みをかけて再検索していきます。

下図(Google Scholerの検索結果表示画面)、左欄の「期間を指定」で論文の発表年代を絞り込めます。

一方、少々古くても、良質で勉強になる論文はたくさんあります

分野で起源となるような論文や有名な論文は何かしらのブレイクスルーを起こしているものです。

そのような論文を雑誌会で紹介するのは全く問題ないと思います。

その際は、被引用件数(他の論文で引用されている数)の非常に多い論文を選べばOKです。

論文の被引用件数は、上図に示す通り、論文タイトル下にある「被引用数: 〇」で確認できます。

年代絞り込みは場合に応じて使い分けましょう

ただし有名な論文は過去の雑誌会で既に紹介済みというケースがあるので、事前に先輩や先生に確認するのがよいですよ。

タイトルでしぼる

年代で絞ったあとは、論文のタイトルで絞ります。

検索結果一覧の論文タイトルだけを見て、候補をどんどんリストアップしていきます。

なんとなく良さそうだな、くらいに思えたらひとまずリストアップでOKです。

キーワードも変えつつ10本くらい候補がそろえばいいと思います。

気になる論文を”新しいタブで開く”でポンポン開いていくのがおススメ!(新しいタブでの開き方は下図を参考してください)

STEP3.論文の種類・雑誌名・研究グループで絞る

続いて、論文の種類、雑誌名、研究グループで絞りこんでいきます。

このうち、雑誌名と研究グループによる絞り込みは、すでに論文を多く読み込んでいる上級生向けの方法になります。

論文の種類でしぼる

まず種類についてですが、そもそも論文には大きく以下の4種類があります。

>>論文の種類とは!?雑誌会におススメする論文の種類とその確認方法を解説

4種類の内、まずReview論文があれば候補から排除します。

ボリュームがかなり多く、読み込みにもプレゼンにも時間がかかりすぎるので、雑誌会には不向きです。

残る3つの種類の選定については、雑誌会の発表時間や発表者の経験値で異なります

下記を参考に候補から消すか残すか判断ください。

Original article:雑誌会のプレゼン時間が30分~60分くらいなら最もおススメ

→内容の充実性やボリュームがちょうどよい

Letter:ナシではないが、一般的にボリュームが少なく発表時間が余る可能性が高い

→参考論文を豊富に引用しながら詳しく説明するなどの工夫が必要

Proceedings:とくに配属間もない学生にはおススメできない

→学会によって査読無しで掲載されるモノもあり、見極めに経験が必要

雑誌名でしぼる

上級生は、同時並行的に雑誌名でも絞ります。

あまり名の通っていない雑誌の掲載論文を除いていきましょう

世界には沢山の学術雑誌がありますが、分野ごとによく目にする学術雑誌があるものです。

たとえばNatureやScienceは有名ですよね。

日頃から論文を読んでいると、「あ、また、この雑誌だ」と、分野における主要な雑誌を把握できるようになります。

配属されたばかりの学生は、先輩に聞いてみるのがよいとおもいます。

【豆知識】

論文の重要性・信頼性はインパクトファクターという指標でも判断できます。「〇〇〇〇(雑誌名)、インパクトファクター」でググると確認できるので、論文探しのひとつの目安にしてみてください。

インパクトファクターが高い雑誌ほど論文掲載までの審査が厳しいため、掲載されている研究成果は重要性も信頼性も高いものが多いのです。

発表グループでしぼる

さらにさらに、同時並行で論文の発表グループでもしぼります。

自分の分野でよく論文を発表している大学、研究グループ、研究者が著者の論文を優先的に残すことまでできれば、完璧です。

何本も論文を通しているグループの研究は重要性も信頼性も高く、ハズレの可能性はグッと低くなります。

発表グループで判断するのは熟練者じゃないと難しいです。なので、できるところまでOK!経験と共にいずれできるようになります!

STEP4.アブストラクトと結論で3~5本に絞る

ここからようやく論文の中身を見て絞っていきます。

ただし、まだ本文を読み込むことはしません

まずは各論文のアブストラクトと結論に目を通していきます。

アブストラクトと結論には、論文を通して著者が伝えたいメッセージが凝縮されているからです。

その研究の重要性や新規性など、論文のエッセンスを短時間でつかむことができます。

興味が惹かれるもの、勉強になりそうなものを選んでいきます

逆に、目新しさを感じないもの、自身や他のメンバーのテーマとの関連性が弱いものは除きましょう。

最終的に3~5本くらいにまで絞り込むイメージです。

STEP5.図・グラフ・数式の数と難易度で1~2本に絞る

このステップで最後になります。

論文中の図、グラフ、数式にざっと目を通し、全体のボリュームや難易度をつかみます

図やグラフの多さは概ね分量と比例します。

分野にもよりますが、図・グラフが10以上あるとかなりの大作である可能性が高いです。

発表時間的に候補から外したほうがよいでしょう。

また数式の難易度は論文理解にかかる時間に直結します。

あまりにも難解な式が多いのであれば、雑誌会として紹介するのは避けましょう。

また別の機会に勉強すればOKかと。

どうしても1本を選びきれない時

ここまででどうにか1本に絞りきれば、論文選定は終了です。

お疲れ様です!

もし、どうしても1本に絞りきれない場合は、以下のどれかで絞りましょう。

どちらも読み込んで良い方を選ぶ

先輩や先生に聞いて決める

1本を次回の雑誌会に回す

そして次は、論文を読み込むステップです。

詳しい方法は以下の記事を参考ください!
>>【雑誌会も怖くない】論文が読めるようになる7つのコツ

まとめ

最後にまとめましょう。

最適な論文の選び方5ステップ

STEP1. Google Scholarでキーワード検索

STEP2. タイトルと発表年だけ見てどんどんリストアップ

STEP3. 論文の種類・雑誌名・研究グループで絞る

STEP4. アブストラクトと結論で3~5本に絞る

STEP5. 図・グラフ・数式の数と難易度で1~2本に絞る

以上です!

この記事が雑誌会に悩める学生の方に少しても役に立てばうれしいです!

ありがとうございました!

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